引越し先の鍵に不安を感じた私

母が更年期に突入した頃から、私たち家族は変わってしまった。とにかく母はすぐに体調を崩しては寝込むことが多くなったし、父や兄や私に対してヒステリックに怒鳴るようになった。家族の行動の一つ一つをいちいち細かくチェックし、気に食わないことがあるとねちねち嫌味を言い、それに対して不愉快な態度を家族が見せると泣き叫ぶ…。それでも母のことが好きだったので、母の機嫌を損ねないよう、母を悲しませないよう、なるべく自分を押さえるようにした。ところが、その我慢は体の不調となって現れた。忘れもしない24歳の誕生日、私は母からのストレスで倒れ、病院で点滴を受けたのだ。このままでは母に潰されると思った私は、家を出ることをそのときに決意した。もちろん母の大反対とヒステリックな罵声は浴びたが、自分を守るためには仕方なかった。幸い父が理解してくれたので、保証人は父に引き受けてもらえたのはありがたかった。

引っ越した先は、単身者用のマンションだった。昔ながらの古い造りのせいか、住んでいるのは男性が多いということに引っ越してから気づいた。ふと、私の部屋の前はどんな人が住んでいたんだろうか、何人くらい住んでいたんだろうかと疑問に思った。そこで不動産屋さんに尋ねてみると…以前住んでいたのは男性で、何と下着泥棒で捕まりそのまま引っ越したということがわかった。しかもそのマンションが完成したときから一度もカギを変えておらず、その間にその部屋に入居したのは先の下着泥棒も含めて5人に上ると言う…。

その経緯に不安を感じた私は、鍵を変えてくれと直訴した。以前にそんな人が住んでいたならなおさらだ。交渉の末、鍵は取り替えてくれることになったけれど、かなりエネルギーを消耗してしまった。契約前に確認できるなら、そういうことも確認すべきだと思う。身を守るために引っ越した先で被害に遭ってしまっては、元も子もない。